スピンオフストーリー
世界各国で翻訳され、稀代のワインマンガとして評価の高い『神の雫』と、創建1400年を誇る長野の名刹で国宝でもある善光寺がジョイントした稀代のイベントにようこそ! この特別な体験をより楽しんでいただくために、原作者がオリジナルのスピンオフストーリーを創作、漫画家にはそのストーリーから喚起されるイメージを美麗なイラストで描いていただきました。登場するのは原作のサードシリーズ『The Drops of God deuxieme』の主役の二人。NAGANO WINEをテーマにした会話のその先に、日本の伝統的なエレガンスの姿を見つけることができました。

神崎雫
シリーズの主人公。ビール会社・太陽ビールの社員。世界的なワイン評論家である父親から、幼い頃よりワインの英才教育を受けてきたが、そんな父親に嫌気が差しビール会社に就職した。新設のワイン事業部に異動となり、仕事の一環として「The Drops of God」を探すことを許される。

遠峰 青夜
『The Drops of God deuxieme』の主人公Shizukuの異母兄である遠峰一青の娘。幼い頃から、母であるローランに絵画や音楽の鑑賞に付き合わされ、感性が磨かれていく。叔父である雫に父の一青が遺した「The Drops of God」を読む条件としてWIC(ワイン イマジネーション選手権)に出場し、優勝することを提示される。
ーオリジナルスピンオフストーリー本編ー
長野県・桔梗ヶ原の畑の前に、オープンカフェなのか、しゃれた椅子とテーブルがあり、そこでグラスを手に語り合う雫と青夜。
青夜ー「素晴らしい景色ね、雫叔父さま」
雫ー「ああ。ここは長野ワインの発祥の地ともいえる桔梗ヶ原だからね。美味しいワインが生まれる畑は、こういう景勝地が多いものだよ、青夜。ブルゴ︲ニュだってそうだろ?」
青夜ーグラスに入ったメルローをスワリングしながら「いい香りだわ。これ、メルローでしょ?長野のメルローってこんなにいい香りなのね」
雫ー「このあたりは、100年以上前から葡萄栽培を始めていたそうで、メルローは1976年から作ってる。1989年にはこの桔梗ヶ原のメルローワインが国際コンクールで大金賞を受賞してるんだ」
青夜ー「昨日テイスティングした千曲川ワインバレーのシャルドネやピノ・ノワールもともかく香りが素晴らしかった。そしてエレガントでフランスワインとはまた違った魅力があったわ」
雫ー「香りの華やかさとエレガンスは長野のワインの特徴ともいえるね。昼夜の寒暖差と適度な湿度、十分な日照時間のおかげだろう」
(青夜ーすっと飲んでイメージ)
青夜「このメルローも含めて、長野のワインのイメージは、叔父さまが連れて行ってくれた美術館で見た上村松園の美人画のようだわ。透明感があって華やかだけど控えめで、なによりも優美で繊細……」
雫「もうひとつ、長野のワインとイメージが重なり合う場所にいこうか」
青夜ー「えっ?」
雫ー「一生に一度は参るべき、といわれる名刹、『善光寺』だよ」
(善光寺の光景)
青夜ー「善光寺……」
雫ー「そう、1400年前に創建され、宗派を問わず多くの人が訪れる日本でもっとも歴史のあるお寺のひとつさ。そこに佇めば歴史ある長野ワインと同じく、時の流れがもたす深遠さを、君ならきっと感じ取ることができる」
青夜ー「あ、ママが言ってた。『牛に引かれて善光寺詣り』っていうんでしょ?」
雫ー「えっ、よく知ってるな、青夜」
青夜ー「思わぬ他人の誘いで物事がいい方向に向かうことを言うのよね」
雫ー「その通り。きっとここにいけば、君の中でワインを表現する世界観が、またひとつ広がるんじゃないかな」
青夜ー「歴史ある場所には、人間の想像力を膨らませてくれる魔法の力が備わっているものね」
雫ー「ああ。さ、いこうか」
ー終ー

原作者からのメッセージ
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著者プロフィール
亜樹直(『神の雫』原作者) 漫画原作者。姉弟の共同ペンネーム。「モーニング」誌上にて『サイコドクター』『サイコドクター・楷恭介』『神の雫』『怪盗ルヴァン』執筆後、2015年『マリアージュ~神の雫 最終章~』連載開始。2008年、グルマン世界料理本大賞の最高位「Hall of Fame」を日本人として初めて受賞。2010年、フランス農事功労賞シュヴァリエ、2018年にはフランス芸術文化勲章シュヴァリエを受勲他、受賞多数。
オキモトシュウ(『神の雫』作画)漫画家。その美麗な作風にファンも多い。『サイコドクター』『サイコドクター・楷恭介』『怪盗ルヴァン』などでも亜樹直と共作している。

メッセージ
もともとNAGANO WINEには5年ほど前から注目していましたが、このところ急速に質が向上し、個性的な“すごいワイン”が生まれてきたという印象です。でもそのイメージはあくまで優しく繊細で女性的。今回創作した『神の雫』のスピンオフストーリーにも登場する上村松園の美人画のような、はかなくも優美な、でも内面に何かあると感じさせる芯の強さ、複雑さがNAGANO WINEの魅力ですね。別の表現を使うと“薄旨(うすうま)感”。冷涼だけど日照が長い長野の気候だからこそ生まれる味わいで、実はこれから世界でも勝負できるワインの方向性だと思っています。和食の素晴らしさはすでに世界で認知されているし、フランスでは日本のラーメンが人気と聞きます。NAGANO WINEとも共通するこの“うまみ”文化の素晴らしさを世界に発信したいと思います。
上村松園と日本のエレガンス

上村松園(1859年 – 1910年) 明治時代を代表する日本画家。気品あふれる美人画を得意とした。1948年に女性として初めての文化勲章を受章する。その作風は優美で繊細、透明感を感じさせる色彩、華やかでありながら控えめな美しさが見事に調和しており、日本の美的感覚を体現しています。まるで風の流れや光のきらめきを描き出しているかのようで、その美しさは見る者を静かに包み込みます。松園が描く女性像や人物画は、まるで絵の中に生きているかのように繊細で、優美な美しさを放っています。華やかな衣装や装飾が施される一方で、過度な装飾に頼らず、控えめでありながらも気品を持ち合わせています。この微妙なバランスこそが、松園の作品に見られる「ジャパニーズエレガンス」の核心ともいえるでしょう。

⇑1枚目「序の舞」昭和11(1936)年作 233.0×141.3㎝ 東京藝術大学大学美術館蔵 重要文化財
⇑2枚目「待月(たいげつ)」昭和19年(1944)年作 73.0×86.0㎝ 足立美術館蔵
『神の雫』概要&ギャラリー
世界の市場価値を左右するワイン評論家・神咲豊多香がこの世を去り、時価20億円を超えるワインコレクションが遺された。その頂点に立つ最上の一本こそが『神の雫』であるーー。彼が選んだ12本のワイン『使徒』と『神の雫』の銘柄、および生産年を言い当てた者のみが、遺産を手に入れることができるのだ。この『使徒』対決に実の息子・雫と養子である一青が挑む!
2004年11月の連載開始当初より、イメージを駆使した独特のワイン表現が人気を博し、ついに350万部突破。多彩な情報、そしてその正確さから、ワイン愛好家はもちろん、ワイン生産者などの業界関係者からも高い支持を得る。その人気は国境を越え、韓国では空前のワインブームの立役者に。2008年の4月には、ワインの本場・フランスでも出版が開始され、各巻1万部以上という異例のセールスを記録中。






3つの「なぜ」を明確にすることで、日本の優雅さの真髄を体験してみませんか?
善光寺
WHY?:善光寺はなぜ人々と女性の救済の寺になったのでしょうか?
長野県、そして日本を代表するお寺の一つ、信州善光寺。実に1400年もの歴史をもち日本で最も古い仏像がご本尊として祀られています。本稿では沢山の人に愛された善光寺の魅力に迫ります。
善光寺は日本への仏教伝来から期間を経ずに開創した無宗派の寺ですが、現在は天台宗と浄土宗の共同運営によって維持・管理が行われています。善光寺本堂の最奥の御本尊は絶対秘仏なので見ることはできませんが、厨子の置かれた瑠璃檀の床下の回廊をめぐり「極楽の錠前」に触れることで、御本尊とのご縁が結ばれ、極楽に行けることが約束されると信じられています。
この瑠璃檀の床下を巡ることを『お戒壇巡り』と言います。
御本尊の真下を通る真っ暗な通路は真っ暗闇。江戸時代の庶民たちはこの闇中で錠前に触れることで極楽に行ける安心という光を見たのかもしれません。
ところで、極楽は地獄とセットです。あの世(極楽と地獄)への関心は平安時代に高まり、僧・源信は、著書『往生要集』において地獄の世界を描きました。
その世界を絵画化した「地獄絵」も誕生し、江戸時代になると地獄図は多くつくられるように。その結果、庶民にも地獄のイメージが広がります。その中、善光寺の本尊を御参りすれば極楽に行けるとして多くの庶民が善光寺にお参りしたいと願ったのです。
この善光寺への人気が、江戸時代に成立した日本の話芸「落語」にも影響し「お血脈」という演目を生みます。誰もが極楽に行けるということは、誰も地獄に落ちないということ。
善光寺への信仰が広がった結果、地獄に落ちる人がいなくなったと閻魔大王が嘆く落語です。当時、それだけ多くの庶民が善光寺を信仰したのです。
さらに善光寺は「念仏を唱えて一心に祈る者は性別・身分を問わず、誰であっても極楽浄土に導いてくれる」と無差別平等の救済を説いたことから、一度でもお参りをすると極楽往生が約束されると信じられ、江戸時代には「遠くとも一度は参れ善光寺」「一生に一度は善光寺詣り」などの言葉が生まれました。
そして、「誰でも」というのは女性も含みました。

善光寺本堂
善光寺は創建以来十数度もの大火に遭いましたが、そのたびに善光寺を慕う全国の信徒らによって復興されてきました。現在の本堂は宝永四年(1707)の再建で、江戸時代中期を代表する仏教建築として昭和二十八年(1953)に国宝に指定されています。高さ約27m間口約24m奥行約54mという東日本最大級の国宝木造建築で、衆生の煩悩の数と言われる百八本の柱で造られています。


ANSER:善光寺は身分、地域、年齢、宗教、そして性別に関係なく、全ての人を平等に受け入れたから。
日本ではかつて、宗教修行の地域・霊場など特定の場所への女性の立ち入りを禁止する「女人禁制」という風習がありました。明治5年(1872)に立ち入りを認める政令が出て以降ほとんど廃止となりましたが、江戸時代は女人禁制の風習があり女人禁制を貫いている寺も多かったのです。その中、善光寺は女性の本堂への立ち入りを認めていました。
女性との関わりを伝える言葉に、「牛に引かれて善光寺参り」があります。
これは、信心のない老婆が、さらしていた布を角にかけて走っていく牛を追いかけているうちに善光寺に至り、のち厚く信仰したという説話です。信心のない女性ですら善光寺は信心に導いてくれると信じられたのでしょう。実際、女性の参拝者が多いことも善光寺参りの特徴のひとつでした。
平等に救ってくれるお寺として、身分や年齢、地域そして性別関係なく信仰を集めたからこそ、これらの言葉が生まれたのです。
このように善光寺は大衆、そして女性に至るまで、あらゆる立場の人々に受け入れられてきました。その無宗派性、平等性、そして人々の心を惹きつける深い教えが、善光寺を現在に至るまで日本を代表する寺院として輝かせているのです。
あらゆる立場の人、の中には戦国大名もいました。その足跡を辿るのもまた善光寺が様々な人に愛された歴史の1つを知ることができるかもしれません。本日は僧侶に直接質問することができる、また様々な宗教行事を1日で体感することができる特別な機会です。余すところなく、この善光寺をお楽しみください。

善光寺大本願
大本願は現在、浄土宗の総本山です。善光寺の創建(西暦642年)当初からその歴史を共にしてきた尼僧寺院で、代々の大本願住職、尼公上人が善光寺上人として、その伝統を継承されてきました。

善光寺大勧進
大勧進の寺名は、人々に仏法を説き作善をなすように勧誘策進する「勧進」を意味します。大勧進は、開山、本田善光公以来、代々善光寺如来さまにお奉えし、民衆の教化と寺院の維持管理にあたってまいりました。大勧進は天台宗大本山で善光寺25ヶ院の本坊であり、大勧進住職(貫主)は善光寺の住職も兼ねております。

真宗善光寺の別格本山である大勧進では、「護摩焚き」と呼ばれる火の儀式に立ち会います。智慧の炎の前で祈りと願いを捧げる特別な体験です。
長野ワイン
WHY:なぜ長野ワインは世界中で注目を集めているのでしょうか?

ワインとはなんでしょうか?
“ぶどうから作られるお酒”であることは間違いないのですが、良いブドウを栽培するためには土壌学や気象学、農学の知識がその出来を左右し、ぶどうをお酒にする醸造の過程では発酵学、微生物学の習得が必要不可欠です。
またワインとは、優れた文学や絵画、音楽と同じように人間の心の琴線を震わせる上質な文化でもあります。そんな、科学と文化が交錯した稀有なるもの~ワインには、単なるお酒という枠を超えた深遠な魅力と人智を超えた魔力があるとさえいわれています。
その歴史は非常に長く、その始まりは紀元前8000~7000年頃まで遡ります。関係の深いローマ帝国の版図の拡大や、キリスト教の布教などにより、ヨーロッパを中心に世界へと広がりましたが、今なおフランスやイタリアなど”旧世界”と称される産地のものが銘醸ワインとして認識されています。
しかしながら、そんなワインの中心国から東に大きく離れた日本の長野で、世界的にも注目されているワインが作られていることをご存じでしょうか。
今回お楽しみいただくプレミアムディナーで、そのNAGANO WINEの素晴らしさを体験していただき、本稿ではその魅力の理由を紐解いていきます。

NAGANO WINEの発祥は約130年前。明治政府の殖産興業政策を受け、長野県ではぶどう栽培とワイン醸造が奨励されました。その中心地となったのがKIKYOGAHJARAエリアです。
恐慌や戦争などによる農作の荒廃、ぶどう品種の植え替えなど、紆余曲折を経たものの、先人たちの努力のおかげで、この地のメルローワインが1989年に国際コンクールで大きな賞を獲得するに至ります。そしてその他のエリアでも近年、急速に品質が向上しているのです。
そのもっとも大きな理由は、長野県の特異な自然環境にあります。ワインのおいしさはぶどうで決まるといわれていますが、良いぶどうが育つ条件は日照が長く、雨量が少ないことです。
周囲を北アルプスや南アルプスなどの山に囲まれた内陸であり、その多くは傾斜を伴った盆地。年間降水量が少なく、日照時間は日本全国の平均と比較して長く、そのためぶどうがよく熟します。
昼夜の気温差も大きいため昼間につくられた糖分がしっかりと実に蓄積され、熟度の高いぶどうとなり、さらには酸も残りやすくなります。
夏と冬の寒暖差も良い影響を与えています。さらに昨今の温暖化により、今まで銘醸地といわれたエリアでも温度の上昇にともなう過熟のリスクが生じていますが、標高差の高い長野県では冷涼な高地での栽培によりそれを回避できます。
さらに県内にはいたるところに傾斜地があるため、雨が降っても水はけに有利です。透水性の高い、大小の河川が運んだ小石や砂混じりの土壌も各地に広がっています。
これらはすべて、ぶどう栽培にとって適した特別の環境です。そして南北に長く、各地で温度差などが少しずつ異なるため、気象条件に合わせて多彩な品種のぶどう栽培を行うことが可能です。
塩尻市はボルドーやブルゴーニュ南部地方、東御市や高山村はシャンパーニュやブルゴーニュ北部地方、上田市は北イタリアなど、名産地に近い気象条件をそれぞれ備えていることも注目すべき点です。

第二の理由は栽培、醸造技術の発達です。春に芽吹いて成長したぶどうの実を摘み取って搾り、タンクで発酵させ、貯蔵した後、瓶詰めして出荷するという、農業と工業の2つの側面を持つのが、ワインづくりの仕事です。
ぶどうの持つ力が存分に引き出されたワインをつくるには、深い知識と経験が要求されますが、長野県にはそれぞれの地域に適した栽培・醸造の技術を有する大小の約80の個性的なワイナリーが存在します。
それぞれが品質の高いワインをつくるために創意工夫、切磋琢磨しているのです。たとえば“レインカット”。
マンズワインが考案した栽培方法で、ぶどうの実がなってきたら支柱の上にビニールの傘をかけます。
こうすることで直接の降雨がよけられ、湿気を原因とする病気にかかりにくくなり、健全なぶどうが収穫できます。
また、特定の品種を単独で栽培するだけでなく、複数の品種をブレンドする技術も進んでいます。
地元の気候や土壌に適した品種を選び、異なる特性を持つワインをブレンドすることで、より複雑でバランスの取れた味わいを実現しています。その他、自然酵母による発酵や、無農薬、オーガニック農法による栽培など、より良いワインをつくるための技術への機運がNAGANO WINEには満ち溢れています。
第三の理由は行政のバックアップによってワイン作りの環境が整えられていることです。長野県はワイン産地としての地域振興を図ろうと、2013年に「信州ワインバレー構想」を打ち出しました。
カリフォルニアのナパバレーでも知られるように良質なワイン用ブドウが育つ土地のことを「バレー」と呼ぶことがあります。
ぶどう畑が広がるその地にはワイナリーやレストラン、ショップなどがつくられ、多くの人々が集う……。そんな未来像を官民一体となって推進しています。

現在は県内のワイン産地を“桔梗ヶ原ワインバレー”、“日本アルプスワインバレー”、“千曲川ワインバレー”、“天竜川ワインバレー”、“八ヶ岳西麓ワインバレー”の5つのエリアに分け、それぞれの特色をブランド化し、観光資源としての価値向上を目指しています。
また、日本の酒税法では果実酒製造免許を取得するには年間6000リットル(ボトル8000本)以上の生産が義務付けられていますが、各所にワイン特区を設定し、そこでは、その3分の1の生産量で認可される条例を発令しました。
その結果、全国から意欲的な生産者が集まり活況を呈しています。
また2002年には「長野県原産地呼称管理制度(NAC)」がスタートし、NAGANO WINEは着実にレベルアップを重ねてきました。そして、2021年にはNACの考え方を引き継いだ「GI長野」が国税庁から指定され、NAGANO WINEのブランドは新たなステージへと進んでいきます。
「卓越した自然環境」、「関わる人間の熱意と創意工夫」、「地域行政からのバックアップ」により、着実に進化しているNAGANO WINEの実像をご理解いただけましたでしょうか。
これは『神の雫』でも語られている、素晴らしいワインができる条件、「天地人」の思想にも通じるものです。
(天は天候を意味し、優れた土壌と優秀な生産者によって造られたワインでも、その年の気候がぶどうにとって最適でなければ、高品質なワインは生まれにくいことを指す。地は大地、すなわちぶどう畑を意味し、それぞれの畑の特徴や状態がワインの品質に大きく影響することを指す。人は生産者を意味し、美味しいワインには技術力が不可欠だということを示している。「天地人」はこれら3つのうち、どれが欠けても品の高いワインはできないとする概念を表している)
最後に、世界から注目されているもうひとつの理由を述べさせていただきます。世界のワイン“振興国”では“旧世界”の頂点のワインを目指すあまり、模倣とも思われるワイン作りをするケースがあります。
しかし、NAGANO WINEの特色と目指すところは、それとは異なる、独自の上質感を感じさせるワインであることです。繊細でエレガントな味わいで、和食にも通じる「出汁感」「うまみ」がワインの個性となっています。
『神の雫』の原作者はスピンオフストーリーにおいて、長野ワインを上村松園の美人画にたとえています。透明感があって華やかだけど控えめで何より優美で繊細……。さらに1400年前に創建され、宗派を問わず多くの人が訪れる善光寺のようなたおやかさ、時の流れがもたらす深遠さも感じとることができる、と語っています。
唯一無二な長野ワインの魅力をおわかりいただけたでしょうか。この特別な空間でのワイン体験が皆さんの心に刻まれることを願っています。

“素晴らしい景色が美味しいワインを生み出す”と、スピンオフストーリーで『神の雫』の主人公Shizukuが語ったように、長野のぶどう栽培地は天と地の恵みを心から感じさせる風光明媚な場所にある。その土地の恩恵を受けた幸せなぶどうは、優れた生産者の技術と情熱によって特別なワインへと形を変える。

花岡純也氏
長野ワインアンバサダー/ソムリエ 長野県松本市出身。日本ワインに関する著書・寄稿多数。既存ワイナリーの販売支援に加え、新規ワイナリーの設立支援や、苗木や原料ぶどうの調達など生産支援、ワインイベント企画・運営など、NAGANO WINEの発展の為に活動は多岐に渡る。今回のイベントでは原作者、軽井沢マリオットホテルとともに議論を重ね、「長野の食とワインによる最高のマリアージュ体験をお届けする」というコンセプトにて選び抜いたNAGANO WINEを提供。
発酵食品
WHY:長野の発酵食品が美と健康と長寿の源とされるのはなぜか?
長野県は発酵食品の伝統でも非常に重要な地域です。この地域特有の発酵技術は、今や日本のみならず世界中で注目され、健康、美容、長寿に対する効果が広く認識されています。特に長野県の発酵食品企業が連携してつくられた「発酵バレーNAGANO」というコンソーシアムは、地域の発酵文化を世界に広めるための取り組みを通じて現代の食文化にも新たな風を吹き込んでおり、その影響力は世界の富裕層を中心に広がりつつあります。
発酵食品とは微生物(乳酸菌、麹菌、酵母など)の働きによって食物が変化し、人間にとって有益に作用した食品のこと。保存性を高めるとともにアミノ酸やイノシン酸、グアニル酸などの成分が生成されうま味が増すことも知られています。長野県は、標高が高く、寒冷な気候と豊かな自然に恵まれた地域であり、これらの条件が発酵食品の発展に大きな影響を与えました。その歴史は、農業や保存技術と密接に関連しています。寒冷地であるため、新鮮な食材を手に入れることが難しいため長期間保存する技術が求められ、その一環として発酵が重要な役割を果たしてきました。発酵に適したこの地では、味噌、醤油、酢、漬物、チーズ、納豆、などの良質な発酵食品が生まれ、これらは長野の食文化に欠かせない存在となっています。中でも信州味噌は、米麹と大豆を使った発酵の産物で、酵母と乳酸菌の働きによるさっぱりとした旨味と豊かな芳香を合わせ持ち、今や日本国内シェアの50%を誇ります。
近年、発酵食品は、世界中でその健康効果が注目されています。発酵食品には、腸内環境を整えるために有益なプロバイオティクス、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれており、消化を助けるだけでなく、免疫力を高めることが知られています。これにより、肌の調子が整い、エネルギーレベルも向上し、総合的な健康促進につながります。美容や健康、さらには長寿にも寄与するとされています。地元企業でもあり味噌のトップメーカーであるマルコメは海外へも事業を拡大し、味噌を日本が誇るヘルシーフードと謳い、長野の発酵文化を世界に発信しています。発酵食品を取り入れた食生活は、今後、世界の食文化の中で重要な役割を果たすことが期待されています。
今回ご提供するプレミアムディナーは、軽井沢マリオットホテルプロデュースによるオリジナルのフルコースで、すべてのメニューに長野の食材と発酵食品が使われています。発酵食品の旨味がそれぞれの食材に染み込み、深い味わいを生み出すとともに、選び抜いた長野ワインとのペアリングにより、より特別な食体験を得られることでしょう。美と健康にも通じる未来志向のディナーをぜひお楽しみください。
プレミアムディナー
プレミアムディナーの開催にあたり『The Drops of God』の原作者を招いた試食&試飲会が軽井沢マリオットホテルで行われました。同ホテルの梅津シェフが考案した渾身の料理の一皿一皿に、ソムリエの花岡氏が選び抜いたさまざまな長野ワインを合わせていく…。活発な議論の末に選ばれた奇跡のペアリングにぜひご注目ください!






コースメニュー
アミューズ フォアグラのテリーヌ信州味噌風味と市田柿、鯉と帆立のムース 鯉こく風、生ハムとおやきベニエのピンチョス
前菜 長野県産チーズと信州サーモン、オマール海老のプレッセ キャビアと共に 野沢菜ジェノベーゼソース
魚料理 昆布締め甘鯛鱗焼き ソバの実とごぼうのリゾット 赤かぶ甘酢漬けのブールブランソース 山椒の香り
肉料理 信州プレミアム牛フィレの長野県産赤ワインブレゼ 発酵食品クラスト 長野県産わさびを添えて
デザート 長野県産リンゴのタルトタタン 酒粕のアイスクリーム 甘酒のソース
小麦パン、全粒粉パン、バゲット/コーヒーまたは紅茶
ワインメニュー
Ryugan 2023(DOMAINE HIROKI)
長野県土着品種(シノニム:善光寺)、爽やかな柑橘系の香りと質の良い酸味、適度な果実感。
Pinot Noir 2020 Special Cuvee(KUSUNOKI WINARY)
チャーミングさにスパイス感と果実味、旨味が強く複雑で余韻が長い。
SHIOJIRI MERLOT Rose 2023(SUNTORY SHIOJIRY WINARY)
イチゴやさくらんぼなど赤系ベリー、柑橘系のフレッシュな爽やかさに加え、2023年の好天を表すような厚みにある仕上がり。
KIKYOGAHARA Merlot 2020(HAYASHI WINARY)
カシス、ブラックベリーなどメルローらしい黒系ベリーのふくよかな果実味。厚みを増す樽のつけ方が好印象。
SOLARIS CHIKUMAGAW SHINANO RIESLING Cryo-Extraction
シャルドネとリースリングのブレンドは日本ワインならではの試み。